「赤也!!!」



真田副部長並の迫力で俺の名を大声で呼んだのは・・・紛れも無く女の声。そう、俺たちの部のマネージャーだ。



「・・・何だよ。」

「何だよ、じゃないわよ!!今、どこ行こうとしてたわけ?」

「別に・・・。ちょっと休もうと思っただけじゃねぇか。」

「赤也の休憩時間はまだでしょ?!ほら、戻った戻った!」

「あー!もう!!わかったってば!だーかーらー、押すな・・・!!」



まるで母親のような・・・いや、そんなもんじゃない。もう女を通り越して、男みたいだ。今、俺を押している力だって、女とは思えな・・・と思ってたら、急に力が弱まった。



「・・・・・・。」

「・・・急にどうした。」

「ん?・・・いや、よかったと思って。」

「何が??」

「ちょっと休むって言ったから、本当はすごく疲れてるんじゃないかなーっと思ったんだけど・・・今みたいに言い返せるってことは、大丈夫なんだってわかったから。だから、よかった!」



そう言って、ニコッと笑う姿は・・・やっぱり・・・女で・・・つーか・・・・・・可愛くて。
そ、そんなギャップなんかには負けねぇからな・・・!!などと思ってみるも、もう1人の俺は、それをあっさり否定する。
・・・惚れたもんは仕方ねぇだろ?!



「はぁ〜〜〜・・・・。」

「ど、どうしたの、赤也?本当はやっぱり、疲れてる??」



盛大に盛大な溜め息を吐けば、心配そうに俺の顔を覗き込む。・・・可愛くねぇわけがねぇだろうがっ!!



「平気。」

「そっか。じゃ、部活頑張りなさい?」



・・・しまった。せっかく心配されてんだから、演技で疲れた振りでもしとけばよかった・・・!
でも、が余りに心配そうな顔すっから、そんな顔はさせたくねぇって思っちまったんだよ・・・。



「・・・いや、やっぱ無理。ちょっとヤバイかも・・・。」

「はいはい。今更そんな嘘、通用しないから。ほら、さっさと動く!!」



んで、気付けばいつも通り怒ってるし・・・。もったいないことしたな・・・。

つーか。そもそも、なんで俺にだけ、あんな態度なわけ?!!そりゃ、先輩には注意しにくい、とかそういう理由もあんのかもしれねぇ。けどよ、余りに違くね??



「仁王先輩。どちらへ行かれるんですか。まだ休憩時間じゃないですよ?」

「・・・悪いが、ここは見逃してくれんか?」

「駄目ですよ〜。そんなことできません。」



ほら!少し困り気味で・・・ちょっと可愛・・・じゃなくて。うん、一旦それは置いといて、だ!
なんで先輩に注意するときは、あんな弱めなのに、俺には強気にくるわけ?
一時はもしかして仁王先輩を・・・?なんてことも思ったが、があんな態度になるのは、先輩全員に対して、だ。むしろ、同い年相手でも、俺以外にはあんな感じだ。
じゃあ、逆に俺のことが特別?・・・とも思ったけど。普通、その気があるんなら、あんな態度しねぇよな!だって、女に見られにくいじゃん?・・・・・・いや、まぁ、俺はそう見えたんだけどよ・・・。

とにかく!なんで、俺に対する態度だけ違うのか?!そこは、はっきりさせとくべきだろ!!
と考えつつ、もし特別に・・・俺のことが・・・嫌いだったら?なんて考えが出てきて、聞けずにいる。・・・それに、聞いたところで答えてくれるとは限らねぇし。
でも、気になる。だって、俺はのことが好きだから。・・・悪いか!

とか考えながら、じーっとの方を見ていたら、その視線に気付いたらしく、が駆け寄ってきた。



「赤也、どうかした?」

「いや・・・。」

「じゃあ、早く戻ろうね?」



その言い方は、やっぱり先輩に対しての口調とは違い、やけに凄みを感じた。そう言って立ち去ったのさっきの表情を思い出したとき・・・脳裏に幸村部長の顔がふっと浮かんだのは、気付かなかったことにしたい。



「やぁ、赤也。そんな所で何をしてるんだい?」



そう言って俺の背後に立っていたのは。



「・・・・・・・・・幸村部長・・・。」

「まだ休憩時間じゃないだろう?」

「今、戻るとこっス。」

「そうかい。なら、いいんだけどね。」



・・・うん、偶然だ、偶然。別に俺が幸村部長を思い出したからって、現れたわけじゃない。たまたまタイミングが良かっただけだ。・・・・・・だよな?



「ふふ、そうだね。」

「な、何がっスか・・・?!」

「いや・・・赤也もそこまでして、に構ってもらいたいんだな、と思っただけだ。」



何だ。てっきり、俺の考えを読まれたのかと思ったが・・・さすがに、そんなわけはないか。
・・・って、安心してる場合か?!!



「ゆ、幸村部長・・・何言って・・・。」

「あれ、違うのかい?に心配してもらうためにサボる振りをしたのかと思ったよ。」

「そんなんじゃないっスよ!!」

「じゃあ、本当にサボろうとしてただけなんだな・・・?」



・・・しまった!!このままじゃ、サボろうとしたことをマジで怒られちまう!・・・幸村部長に怒られるのは勘弁したい!!



「いやっ!!!その・・・。部長の言う通りっス・・・。が気になって・・・・・・。」

「やはり、そうだったんだな。・・・だが、サボるのはよくない。」



って、結局どっちでも怒られるんじゃねぇか・・・!!そりゃ、当たり前だけど・・・。
それに、最初っから俺が幸村部長に敵うわけがねぇもんな・・・。テニスでは勝つつもりでいるぜ、もちろん!!でも、こういうときは、やっぱ逆らえねぇって思うよな・・・。



「・・・反省してるっス・・・。」

「それは何よりだ。・・・でも、そんなにが気になるのかい?」

「そうっスねー・・・。」



あぁ、どうせこの際、だ!一応、幸村部長に言ってみっか。・・・隠し事なんてできるわけがねぇしな、幸村部長相手に。
と、半ば諦め気味に、俺は説明をした。



「だって、の奴、俺にだけ全然態度が違うじゃないっスか。その理由がよくわかんなくて・・・。もし俺を特別に想ってくれてるんなら、もっと優しくしてくれそうなもんだし・・・。じゃ、俺は特別に嫌われてる方なんじゃないか、って・・・。」

「う〜ん・・・それはどうかな。」

「え・・・どういうことっスか??」

「よく言うだろう?好きな子ほどからかいたくなる、って。それと同じような原理で、も素直になれないだけかもしれない。だから、あんな強気な態度になる。」

「部長・・・。」

「・・・まぁ、これはあくまで、俺の推論だけどね。本当のことは、に聞いてみないとわからないな。どうせ、赤也は聞くまで部活に集中できないだろうから、今聞いてきたらどうだい?」

「えっ?!いいんスか?!!」

「早く終わらせるんだよ。」

「・・・どうもっス!!」



さっすが、部長!!どっかの副部長とは大違い!話がわかるっスね!!
そう思いながら、俺はさっきが向かった方へと駆け出した。
・・・って、俺、マジで聞くつもり??なんか上手いこと幸村部長に乗せられたような・・・。いや、でも!やっぱり、気になるもんは気になんだし!!善は急げ、ってな!



ー!!」

「赤也・・・!何やってんの・・・?休憩時間はまだだ、ってさっきあれほど・・・。」

「大丈夫!幸村部長に許可もらったから!」

「幸村部長に・・・?それ、嘘だったりしないわよね?」

「当然!何なら、幸村部長に確認してみてくれよ!」

「・・・・・・そこまで言うなら・・・わかった。・・・で、何?何か用があるんでしょ?」

「聞きたいことがあんだけど・・・なんでは俺にだけ、態度が違うわけ?なんか、きつい気がすんだけど。」

「・・・気のせいじゃない?」

「気のせいじゃない。」

「・・・って言うか、こんなことを聞くためだけに、本当に幸村部長から許可をもらえたわけ?」

「それは事実だし、話を逸らそうったって無理だからな。」

「・・・・・・別にそんなこと、気にしなくったっていいじゃない。」

「気になんの。」

「どうして?」

「そんなののことが好きだからに決まってんだろ!」



最初からこんなことを言うつもりだったわけじゃねぇけど・・・。言い切った今、特に後悔はしてなかった。・・・幸村部長に少し背中を押してもらったような気もするな。
で、目の前のは、と言うと。驚いた顔でこっちを見た後、あの可愛い方の笑顔を俺に向けた。



「本当?!ありがとう!実は、私もだよ!」

「マジかよ?!」

「うん!!」



今までとは違い、かなり素直に頷く。・・・いやぁ、マジで可愛い。とか思う前に。やっぱり・・・。



「じゃあ、やっぱり幸村部長の言う通り?」

「えっ?!なんで知ってるのー?」

「なんでって・・・。」

「だって、この作戦は秘密だって、幸村部長が・・・」

「さ、作戦??」



何か、話が噛みあってるようで、そうでないと思ったら・・・・・・。



「そう。私、赤也のことを幸村部長に相談してたんだけど・・・。それで、あえて強く接してみたら?って幸村部長が。私は優しくした方がいいんじゃないかって思ったんだけど・・・。幸村部長がそれじゃつまらないから、って。でも、やっぱり幸村部長の言う通りだったね!」

「何ー?!!」

「な、何・・・?!」

「じゃあ、幸村部長は最初から事情を知ってて・・・・・・。」

「え、え?どうしたの、赤也??」

「俺は幸村部長の掌の上だったってことか・・・。」

「・・・よくわかんないけど・・・でも、おかげでこうして気持ちをわかり合えたんだし、結果オーライじゃない??」



本当は、そんなの絶対結果オーライでも何でもない!!って思ってるんだけど。だって、優しく接してもつまらない、っていうのは、作戦がどうとかって言うより、幸村部長自身が面白くなさそうって思ったからだろ?!
まぁ、に文句を言ったって仕方ない。文句を言うなら、幸村部長に・・・・・・って、それはそれで無理だな。・・・つーか、余計無理。さっきも思ったけど、あの人に敵うわけがねぇんだから。
とにかく、せっかくが喜んでくれてるんだから、今は俺もそっちに合わそう。俺だって、すっげぇ嬉しいんだし。



「そうだな。・・・ところで、その作戦はもう実行する意味無いだろ?ってことは、これからはちゃんと優しくしてくれるわけ?」

「あ・・・。そうだね、そういうことになるね。・・・でも、もう慣れちゃったからなぁー。やっぱり、注意するときとかは、あんな感じになりそう。」

「えぇー・・・。」

「それが嫌なら、私が注意しなくても済むように、赤也がちゃんとしてくれればいいでしょ?」

「う・・・、たしかに・・・・・・。」

「わかった?」

「・・・・・・努力します・・・。」

「うん、頑張って!応援してるから。」



最後に、また可愛い笑顔でそんなことを言われたら、頑張るしかねぇだろ。
・・・・・・どんな態度でも、俺はにも敵わないみたいだな・・・。まぁ、それは惚れた弱みってやつだから仕方ない。もう1人は・・・・・・うん、せっかくと楽しい時を過ごしてんだから、そんなことはどうでもいいだろ、な!
・・・いや、どうでもいいっつーのは、その・・・決して悪い意味じゃないっスから!!本当、感謝してるっス・・・!!!













 

というわけで、お誕生日おめでとう!!全然、誕生日ネタじゃないですけどね!(笑)しかも、幸村さんに散々(?)な目に・・・。ごめんね、切原くん!とりあえず、誕生日に間に合ってよかったです。
今回は男勝りなヒロインを書きたかったのですが・・・上手く行かなかったですねー。途中で変わるにしろ、最初の方もあまり男勝り感が出せなかったなと反省です・・・;;

あと、幸村さんの口調も難しい・・・!!幸村さんも大好きなので、いずれメインで書きたいのですが・・・。なかなか・・・(苦笑)。
メインが誰であっても、今後も頑張りたいです!!とにかく、おめでとう、切原くん!

('09/09/25)